どうも、同人結社鬼姫狂団 代表の秋元惟史(活動名義・民富田智明)です。
鬼姫山回峰行として、埼玉県秩父市と横瀬町をまたぐ武甲山(標高1304m)を踏破してきました。
鬼姫山回峰行とは、武州鬼姫信仰において神聖視される秩父鬼姫山の比定地である秩父山地と、各地方に点在する鬼姫山支山の比定地である山岳地を、仮に鬼姫山と見立てて自らの足で踏破することによって、鬼姫山へ想いをはせ、己と向き合い、鬼姫山三神と心を一体化させ、神秘の萌燃力を授かることを目指す山岳修行です。
今回登った武甲山は、秩父の象徴として古くから信仰の対象とされてきた山であり、町の中心地に鎮座する秩父神社の神体山とされています。
武甲山の名前の由来は、日本武尊(ヤマトタケル)が自らの甲(かぶと)をこの山の岩室に収めたという伝説が元禄時代に広まったことにあるようです。
また、秩父嶽とも、妙見山とも呼ばれるようです。
武甲山は、秩父の象徴とされるように、秩父を取り囲む山々の中でも、ひときわ目立ちます。
しかしながら、明治以降にセメントの原料となる石灰岩の採掘が行われるようになり、豊富な石灰岩と引き換えに、著しく山体が崩壊し、痛々しいまでに斜面がえぐり取られた異様な景観になってしまいました。
武甲山の山頂には武甲山御嶽神社が鎮座していますが、元々の山頂部はセメントの採掘で削り取られてしまったので、移転されたもののようです。(山頂部が削られたので、標高も低くなったそう)
セメント産業は、武甲山から授かった多大な恩恵であるのは事実ですが、本来神聖な山である武甲山が日に日に破壊されていくというのは、色々と複雑な心境にならざるを得ませんね。
武甲山は、セメント採掘場である前に、古来より神様が住む山です。
そのため、削られていく秩父の象徴を想い、特別に真剣な気持ちで登りました。
武甲山の遠景。
雄大だが、山体崩壊が著しい。
これでも秩父神社の神体山です。
我々も武甲山のセメントの恩恵に与っているので、セメント採掘をやめろなどとはなかなか言えません。
とはいえ、貴重な植物群や、巨岩群、縄文時代から近代に至る歴史遺跡も消滅してしまったとのこと。
午前8時すぎ、武甲山登山口駐車場に到着。
すでに車が沢山いて、なんとか1台分の余裕はあり、自分の車だけは駐車できました。
駐車場は大きなハチが飛んでいて、車外に出て準備をするのが怖かったです。
駐車場の入口には、ここが神社の表参道であることを示す鳥居があります。
日陰で暗いのですが、鳥居の前にはお狗様が4体立っています。
秩父は山狗信仰が伝わるところです。
武甲山も山狗信仰の神社なのです。
案内板によると、山頂までは片道2時間10分程度とのこと。
脇にあったポストに登山届を記入して投函し、準備体操して出発しました。
しばらくは傾斜のない道を進みます。
沢沿いにある廃屋のような建物を過ぎるところから、傾斜がきつくなってきます。
かっこいい滝。
まだまだ歩きには余裕があります。
沢沿いを延々と進みます。
日曜なので、登山者は多かったです。
道標が逆光で読めない。
他の山との分かれ道を過ぎると、本格的に石だらけのゴツゴツ道が始まります。
延々と進みます。
冒険心をくすぐる橋がありました。
すき間だらけなので、足元に注意しないと踏み外します。
延々と進むと、不動滝というかっこいい滝がありました。
水を汲めるようになっていて、大量のペットボトルが置かれていました。
「山頂の公衆便所の水洗用に、無図の運搬にご協力ください」とのこと。
大は8L、小は6Lを目安に、と書いてありましたが、2Lボトル1本を運ぶだけでもかなり負荷がかかるので、1本しか持ちませんでした。
コップも置いてありましたが、あくまでも滝であって湧水ではないので、飲むことは避けました。
そもそも、コップ自体が放置されている感じで、衛生的な感じではないですし。
滝の脇にはお地蔵さま。
登山の無事を祈りました。
滝をしばらく進むと、武甲山御嶽神社参道とありました。
延々ときつい登りが続きます。
道の途中で、三十丁目のような到達度の目安石がいくつも立っています。
山頂部で六十丁目だったか……。
延々と進みます。
延々と進みます。
謎の祠。
延々と進みます。
延々と進みます。
この辺、かなりきつめです。
これを過ぎて、ちょうど真ん中あたりとのこと。
広い平坦なところに出ました。
休憩のための丸太の腰掛がいくつかあります。
あと60分。
まだまだ先が長い。
ここで、大きめの休憩をとりました。
車を置いてある登山口は標高515m地点とのこと。
実質的な登る高さは、789mでした。
以前登った関八州見晴台の標高がその辺でした。
標高789mでも十分きついです。
延々と進みます。
延々と進みます。
延々と進みます。
体力的にかなり余裕がなくなってきており、小休止の頻度が増えてきました。
なんでこんなきついことやってるんだろうと、雑念が生じてきます。
延々と進みます。
なんとなく、先が開けてきた気がしました。
明らかに、先が開けてきました。
きつい坂を抜けて、広いところに出ました。
多くの登山者が休んでいました。
青空が広がっていました。
ついに、武甲山御嶽神社に到着です。
きつかった。
お狗様。
お狗様。
神社を参拝した後、奥に続く山頂を目指しました。
鐘楼がありました。
かつては、もっと大規模に修行場が栄えていたようで、お寺もあったようです。
この鐘楼は、その名残でしょうか。
山頂まであと少し。
ついに、山頂です。
フェンスの向こうはセメント採掘場で、断崖絶壁になっています。
山頂からの秩父市街地の眺望。
標高1304mとなると、さすがに高度感がすごいですね。
かろうじて、採掘場が見えました。
白いぼやけているところが採掘場です。
由緒書き。
神社の社務所裏に、公衆便所の水洗用のマンホールがありました。
ここに、滝で汲んできた水を注入します。
自分の山岳修行の経験が、「便所の水洗」という、世のため人のために役立った瞬間です。
空になった2Lボトルに加えて、もう1本の2Lボトルもリュックに突っ込んで、先程の滝に戻すことにしました。
これが、滝からこの身で運んできた聖なる水です。
神社の参拝を終えて、20分ほど休憩をとり、下山を始めました。
下りは圧倒的に負荷が少ないですが、足を滑らせたり、つまずいたりして転倒する危険があります。
慎重に進んでいきました。
案の定、何度かズルっといって焦りましたし、滝にボトルを戻してから50mくらい下りていったところで、転びました。
石がゴツゴツしていない土の道でしたし、おしりから転んで安全に受け身を取ったので、大したことはありませんでした。
しかし、暑いからとグローブをはずしていたのがあだとなり、受け身を取った際に右の手のひらを少し切ってしまいました。
しかも、あろうことか、ちょっとしたケガのための絆創膏を家に忘れてきてしまいました。
さらに、消毒液もありませんでした。
なんたる失態。
大したケガでもありませんが、止血のために、首に巻いていた汗拭きタオルを手のひらに巻いて固く握り、しばらく進みました。
100mくらい進んだところに、安全に手を洗えそうな沢があったので、応急的に土で汚れた手を洗いました。
もちろん、水道水ではなく沢水なので、水そのものに危険な細菌がいる可能性もあります。
とはいえ、傷口が土で汚れている状態よりはましなので、きれいに洗い落としました。
止血のためにタオルを握りしめたまま、延々と進みました。
だんだん血が止まってきて、タオルを握らなくても平気になってきて、疲れ果てて駐車場に戻りました。
絆創膏がなくても問題なく車のハンドルが握れる状況だったので、秩父市内に絆創膏を買いに行くこともなく、そのまま帰路につきました。
帰り道、武甲山のすぐ近くにある秩父観音霊場札所8番に立ち寄って、仏様に登山の無事を報告し、
お寺の駐車場にあった公衆便所で入念に傷口を洗ってから、国道299をぶっ飛ばして帰りました。
ちょうどお昼頃だったので、芦ヶ久保の道の駅に立ち寄って何か食べてこうと思いましたが、ありえないほどの満車だったので諦めて、そのまま直帰しました。
これで、武甲山の踏破は完了です。
今回の教訓としては、たとえ夏で暑くてもけが防止のためにグローブをはずしてはならないということと、絆創膏と消毒液の常備を怠らないということですね。
次の鬼姫山回峰行をどこにするかは未定ですが、お寺と城跡の両方を楽しめる小鹿野町の札所31番観音山に行ってみようかと思っています。
もしくは、奥多摩か、神奈川県の丹沢山系あたりに進出するのもいいかもしれません。
神奈川は、大学生時代に厚木で2年(映像学科)、戸塚で2年(心理学科)住んでいるので、箱根、小田原、大山、鎌倉あたりは遊びに行っていて、結構身近に感じています。(地理的にも、横浜と川崎は武蔵国の一部ですし)
神奈川の山ガイドも本屋で買ってこないとですね。